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私達は他の所にも何か有るんじゃないかと捜査するふりをしながら、目的の砂場に向かう。
この間来たときは、この距離でも辛かったのに。今日は全然頭が痛くならない。
課長は私の近くにいて、独り言に見えないようにしてくれた。
私は砂場で遊んでいる泥だらけの男の子に話しかけた。
「…君、泥遊び好きなんだ。」
「………」
彼は黙々と泥だんごを作っている。
「あたしも、一緒にやっていい?」
「……」
私はスーツの袖を腕捲りし一緒に泥だんごを作る。
普段なら乾いた砂のはずだが、彼がいるからなのか砂場の砂はシットリと濡れていた。
「…結構難しい。君上手だねぇ。」
「…」
何か気になるのか、彼はじっと私の顔を見る。
「…君、名前は?」
「…っ…ける……た…ける…」
聞いてみたものの返事は期待していなかった。
驚いて課長のほうに顔を向けようとしたが止めた。せっかく繋がりそうなものが途切れてしまいそうだったから。
私はまっすぐに彼を見る。
「…たける?たけるくんて言うんだ。…歳は?いくつ?」
「……ご…さい」
彼は泥だらけの手の平を私に見せた。
名前と年令は覚えてるんだ…
「そっかぁ…じゃぁ幼稚園の年長さんかな?君、お団子作るの上手だね。アタシにも教えてよ。」
彼は頷いて、泥だんごを作る。私も彼にならって作り始める。
…あれ?…前にもこんなことあった気がする…この公園で…この砂場で…こうやって一緒に泥団子つくって……。
「っ!…あっ…」
その時、いきなり頭が痛くなり、目の前が真っ白になった。
気が遠くなりその場に倒れた。
倒れるときにしっかりと聞こえたのは、近くにいた課長の声ではなく目の前にいるこの子の声だった。
『やっとあえた…』
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