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私は一人、廊下を歩いている。業務時間を過ぎているが、更衣室に向かうでもなく…誰もいない廊下を進む。 上野公園署刑事課強行犯係。そこに私が着任してから一年が過ぎた。 初日から殺人事件の捜査本部がたてられていたから、さぞ忙しいのだろうと身構えていたが、すごしてみると大きな事件はあまり起こるものでもなかった。 どちらかというと捜査零課の仕事の方が忙しかったような気がする。 捜査零課とは、幽霊捜査を主とした非公式の部署である。全国津々浦々、いわゆる鬼門という場所の近くの警察署につくられているのだという、秘密の部署である。 メンバーは刑事課強行犯係所属、私こと持田桜子(もちだ さくらこ)。 その上司、元公安に所属、捜査一課で[鬼元]と呼ばれる時代を経て、現在は刑事課と零課の課長を兼任している、梶原元(かじわら げん)。 まぁ色々あって、私の彼氏も兼任している。 上野公園署の中で変わり者の集まりの鑑識係。その中で群を抜いての変わり者、死体マニアで通称殺人鬼こと、影山仁(かげやま じん)。 なぜ殺人鬼かというと殺人事件のプロファイリングがあまりにも当たりすぎるためついたあだ名だそうだ。 そして最後がレイ。本名は神邑総司(かみむら そうじ)。 彼が一番特殊なのかもしれない。実は彼は幽霊なのだ。 幽霊には生前の記憶が無い事が一般的らしく、つい最近まで記憶が無かった。 …ホントに色々あって、少しだけ思い出す事ができた。自分がもとは公安にいたこと。元さんと同期であること。そして彼が追っていたターゲット、自分を自殺に見せかけて殺した、元上野公園署署長南條のこと…。 まだまだ私が知らないことがありそうだ。 とにかく彼が居なければこの捜査零課は無かっただろう。 メンバーはこの四人…あっあと…プラス一匹。 事件を追っている時にであって、いつの間にか居着いてしまった三毛猫の幽霊ミケ。 捜査零課はこの四人と一匹で活動している。 つまり私と梶原課長と影山さんは、いわゆる見える人なのだ。
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