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--そんなこんなで現場の、上野第三中央公園についた。
「あれ?…ここ…」
「知ってるのか?」
私はここを知っていた。
私がまだ交通課で婦警をしていた頃、駐車禁止の車の取り締まりに良く見回りに来ていた場所だ。
周りを見回すと、もう日も沈み暗くなっているせいか人影はいない。
「はい、交通課の時に良く通りました。」
「ふぅん…っ!」
公園に向かって歩きながら話していると、いきなりレイさんの眉間にしわが寄り片手で頭を押さえる。
「大丈夫ですか?」
「あぁ…まだやつまで距離あるのにコレか…君はどうだ?」
「いえ、私はまだ…」
自我を失ってしまった幽霊は私たちではもう言葉を聞いてあげることができず、耳鳴りにしかならない。
ただレイさんは同じ幽霊なのではっきりと言葉が分かるらしい。
「何て言ってるんですか?」
「昼間来たときと同じ…悲しいような寂しいような…言葉にはなってないな。」
近づくごとに、レイさんの顔がゆがむ。
少しずつ近づき公園の門の所まで着いた。
流石にここまで来ると私でも頭が痛い。
一度足を止め、彼の様子を伺う。
「レイさん大丈夫ですか?凄くつらそうですが。」
「…昼間よりアイツの想いが強くなってる。」
「えっ?」
私は目を凝らして探した。もう誰もいないであろう公園の砂場に誰かがいた。
「アイツって…あの砂場にいる少年ですか?」
レイさんは頭を押さえながら頷く。
「…レイさんはここにいてください。私が行ってきます。」
「待て!!今日はこれで帰る。ここまでになっているとは、想定外だ!」
私はレイさんの制止を振り切り、公園に入った。
何でこんなに気になるんだろう。
頭がものすごく痛い!彼から発せられる怨念の凄さに汗が吹き出る。足も震える。
それでも…私行かなきゃ!
私は一歩ずつ近づきながら話しかける。
「君!……話を!」
彼は私の方を見る。
さっき公園の外からは存在しか分からなかったけど、今はしっかりと顔が見える。
「!!…君はっ!」
彼は目を見開き私に向かって吠える!!
声は聞こえないけれど、きっと何か訴えてるんだ!!
この声は私が聞いてあげなきゃ!!
しかし、気持ちをいくら奮い立たせても足が前に進まない。むしろ後ずさりしてしまっている。
「っく!…話を!」
私が前に体重をかけた瞬間肩に手をかけられる。
「おい!!帰るぞ!!」
「しかし!」
「来い!今オレ達に出来ることはない!!」
「っ!…わかりました。」
私とレイさんは現場から急ぎ立ち去った。
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