第一話『出会い』

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入り口まで行くと、スーツを着た、背の高い痩身の男性がこちらを振り向いた。 小野寺蒼、その人だ。 顔立ちは近くで見るほど整っていて、柔らかなハニーブラウンの髪はさわさわと風に揺れる。 髪色と同じ瞳は振り返った際に真っ直ぐと藤川を見つめていて、若干彼女はたじろぐ。 「え、と……藤川綺さん、かな?」 「はい、小野寺蒼さんでよろしかったですか?」 「初めまして。あなたが担当編集さんなんですね」 雰囲気に違わず、柔らかに笑って見せる彼はどこからどう見ても好青年で、イケメンと言えるだろう。 「じゃあ、とりあえず入りましょうか」 そんな小野寺の声により、二人は喫茶店の中に入っていった。 今の時間帯は混まないのか、人はまばらで静かな空間を作っていた。 二人は奥の方へ進み、向かい合って席につく。 そこに店員がお冷やのサービスをするため席に近づく。 「あの、僕コーヒーお願いします」 「あ、私はカフェオレお願いします」 「かしこまりました、少々お待ちください」 小野寺がさらっと注文したことで、藤川はちらりとメニュー表を見て即決した。 慌てたとも、いえるが。 「ごめんね、少し急がせたね」 「あ、いえ、お気になさらず」 「まあ改めて、僕は小野寺蒼といいます。よろしくね」 フレンドリーというか、悪く言うと馴れ馴れしいというか、にこりと笑んで手を差しのべる。 この状況で握手か、と思いつつも、藤川は手を差し出した。 「小野寺さんの担当をさせていただく藤川綺です。よろしくお願いします」 「そんな固くならないでよ。それなりに付き合ってもらうんだし、気楽にね」 「はぁ……ありがとうございます」 「……こちらコーヒーでございます」 「あ、ありがとう」 「こちらカフェオレです」 「どうも」 タイミングよく現れた店員は会計表を置いて一礼し、カウンターへと去っていく。 二人はそれを見たあと、再度話し出した。
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