第一章

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きっかり午前十時。 ガガガーッと地面を掘る音が、やかんのピーッという音に 重なった。 コーヒーをいれようとしていたわたしは、 あわてて火を消すと、隣家の様子を伺った。 我が家との境界線とおぼしき白線より、やや内側に作られた木柵。 その柵に沿って掘削が始まっていた。 スタッフは六十歳代ひとり、二十代ふたり、だろうか。 隣家の前に停められた軽トラには、昨日の名刺と同じ 「サンガーデン」のロゴ。 どうして…。 改めて打ち合わせをする間もなく始められた工事に、 不満を覚える一方、出費を覚悟していただけに正直、 助かった、とも思えた。 とりあえず!時計を再び確認すると、 目前に迫った締め切りを最優先に、再びモニターに向かった。 フリーライターに甘えは許されない。
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