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プロローグ
三年前。
自分の住むこの街は、
ありふれた振興住宅地のひとつに過ぎない、そう信じていた。
東京からJRで一時間。
駅からは、なんとか徒歩十五分。
とりどりに小さな家が並ぶ、一区画90坪からのつましい住宅地。
住民が所有するのはマイカー平均1.5台、こども1.8人、ペット0.8匹。
駅前には地域密着型のスーパー、銀行、大手フランチャイズのレストランにファーストフード店。
宅地のなかには、住宅併設のクリニックにヘアサロン。
車を持たないお年寄りでも、市役所や図書館行きの巡回バスに乗れば、たいていの用は足せる。
最近では、アウトレットや大型ショッピングモールが誕生。
車で二十分も走れば、最新の流行にも乗り遅れずに済む。
難を言えば…
東京が少し遠い。
進学校に通いにくい。
地名がカッコ悪い。
一部住民が地元出身のため、わかりやすくて恥ずかしい方言が、
ときたま飛び交う。
そして、振興住宅地の常として自治会運動がさかんだ。
一度足を踏み入れると、たくさんの役回りや運動会や交流会などのイベントをこなさなければならない。
しかし宅地造成が落ち着いた今、それもあと数年の辛抱なのかもしれない。
みんなで、程よい規模と生活レベルを共有するニュータウン。
ごくごく平凡なローカル住宅地。淡々と過ぎていくであろう毎日。
しかし、事実は違っていた。
我が家の隣人、
ナカムラさんには秘密があったのである。
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