第1章

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同時刻。 「頼む!娘が帰ってないんだ!探してくれ!」 50代半ばのくたびれたスーツを着た男がテーブルに頭を着けて頼み込む姿があった。 「そんなこと言われても困りますよ。娘さんだってもう成人してるんでしょ?」 男の向には、中年太りの警察官が面倒そうに話を流そうとする。 「そ、そうですが、」 男が反論しようとしたところで電話が鳴る。 「こちら生活安全課。あ?殺害?んなのはお前らのだろ?知らねー」 この警察官、やる気がどこにも見えない。 男は深い溜め息を吐いた。 ー警察なんて、信頼した俺がバカだった。 「もういいです」 「だから、俺の範囲じゃねーよ」 電話であーだのこーだの騒ぐ警察官のネームには、寺本 太郎と記されていた。 ー愛。どこへ行ってしまったんだ。 男は苦しそうにネクタイを握った。 山田五郎。山田愛の父である。
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