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「これだけ?」
「あと眉墨もあるだろ」
よく見ると引き出しの奥に短い鉛筆みたいなのがあった。
「年寄りにはそれで充分だからね」
「そうだよね。ちょっと借りてもいい?」
「良いよ」
私はファンデーションを顔に塗ってみた。
「なんか白すぎない?」
「白いかい?口紅すれば大丈夫だよ」
「そうかな?」と言いながら佐也加は唇を真一文字にして口紅をひいた。
「なんか赤すぎない?」
「赤いかい?眉を引けば大丈夫だよ」
「そう?」と答えながら佐也加は眉墨を引いてみた。
「なんか黒くて太すぎない?」
「そうかい?どれどれ」とおばあちゃんは鏡の中の佐也加を後ろから覗き込んで言った。
「なんか古くさい化粧になっちゃったね」
「だめじゃん」
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