さようでございますか 佐也加の恋5

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「これだけ?」 「あと眉墨もあるだろ」 よく見ると引き出しの奥に短い鉛筆みたいなのがあった。 「年寄りにはそれで充分だからね」 「そうだよね。ちょっと借りてもいい?」 「良いよ」 私はファンデーションを顔に塗ってみた。 「なんか白すぎない?」 「白いかい?口紅すれば大丈夫だよ」 「そうかな?」と言いながら佐也加は唇を真一文字にして口紅をひいた。 「なんか赤すぎない?」 「赤いかい?眉を引けば大丈夫だよ」 「そう?」と答えながら佐也加は眉墨を引いてみた。 「なんか黒くて太すぎない?」 「そうかい?どれどれ」とおばあちゃんは鏡の中の佐也加を後ろから覗き込んで言った。 「なんか古くさい化粧になっちゃったね」 「だめじゃん」
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