第2章 怪しいスタジオでの写真撮影

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 出かける前に、慌てて取り揃えた自前の衣装。順番に組み合わせを変え、着替えていくのだが、カメラマンはそこから退出しようとしない。「すみません。着替えたいので…」と言って初めて隣の部屋へと出て行ってくれた。「(着替えが)終わったら、携帯で呼んで。」と言い放ち。ということは、普段はモデルさんが着替える時、または脱ぐ時はその場にいるという事なのか…。  ところで、また私のミステイクが出た。衣装チェンジをいくつか終え、白い清楚な縦縞入りのワンピにさしかかっ時、気づいた。下に着る“キャミソール”を忘れた!!どうしよう!そのワンピは、私の大のお気に入りで、「LU SOUK ルスーク」というブランドのもの。清楚で品の良さがあり、流行のテイストも取り入れてはいるが、こってりフェミニンという訳でも無い。そのお気に入りのワンピは襟が付いているのに、グゥーと胸元がブイラインに開いている上品なセクシィさがある。胸元のブイラインはウエストに向かってややクロスしていく形のカシュクールタイプと言えば、どれだけ開いているのかご想像できるであろう。要するに、その開き具合だからインナーにキャミが必要なのである。その大事な“キャミ”を忘れてしまったのだ。仕方が無いから、そのことをカメラマンに告げると、下着が見えた形でいこうという事になった。ちょうどその日は、レースを施した黒いブラジャーを付けていたのだ。「分からない、分からない。」と言われて、私も忘れたキャミの胸元もどうせ濃紺のレースだったからとナントカ自分を納得させて、撮影に入った。何枚かシャッターを切ったカメラマンが、「中途半端に見えちゃうから下着取ってみて!」と言い出した。「えっ!」と絶句。渋々応じたものの、胸元が気になって、のびのびとポーズがとれない。こうやってカメラマンは上手に段階を経て、モデルさんの身にまっとたものを少しずつ減らしていくのであろう。 露出した“デコルテ”から胸元、脂肪のたっぷりついた二の腕あたりを見て、「お手入れしてるね?」などとちょっとエッチな言葉に、気恥ずかしさとほのかな興奮を覚えながら、ポーズをとった。  先生のおだて通り、母親ゆずりで肌のキメの細かさにはそこそこ自信はあるが、やはり、フォルムあっての肌質であろう。私の仕事内容からその宣材写真にヌードは必要ないが、そこには、脱ぎたくても脱げない私事情が存在するのである。
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