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由真は出た。話すことなど何もない。
あわてて受話器を置いた。
その数分後に電話が鳴った。
村垣からで、由真が緊急の用事で電話を欲しがっているということだった。
それがマリアには嬉しかった。
―もしもし…
―マリア…
由真は涙声だった。
―アイツは、マリアになら本当のことを話すっていうの。直接会って話がしたい、って…
東京に帰っても、マリアは自宅には戻らず、ホテルに落ち着いた。
それは、由真の母と極秘の会見をするためでもあった。
約束の時間にやってきたのは、由真に顔立ちはどことなく似ているが、しっかり者の彼女の親とは思えない、自堕落さがある女だった。
肌も四十とは思えぬ張りのなさだった。
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