第9章  魔法

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「お金…気ばらしのできるお金…私はあの子を高校に入れる時、恥をしのんであの子の父親にお金を借りに行ったわ。」 マリアの父は由真が五才の時に死んでいる。 「ちょっと待って下さい。由真の父親は生きてるんですか? 由真の父親は、俺の親父じゃないんですね? 」 女は答えない。が、 「私は自分の運命を呪い続けてる。もう少し早く、佐伯さんが私に振り向いてくれたら…」 マリアは見つめ続けるだけだった。 「悲しかったわ。仲間だった美幸たちには、恥ずかしかったわ。だから…佐伯さんの子供だって…」 女は絞り出すように言った。マリアの待っていた一言を。 「…嘘をついた…」 しかし、信用はできなかった。それでマリアは念を押した。 「由真の本当のお父さんは? 何をしている方なんですか? 」 「ねえ、私はここまで話したのよ。お金はもらえるんでしょうね? 」 マリアはうんざりしながら、払うと答えた。 「由真の父親は、あなたは知らないでしょうけど、佐伯さんと同じバンドだった人よ。ギターの、江波って人よ。子供がいない人だから、半信半疑でも由真の学費をくれたわ。佐伯には立派な息子がいるから、娘は俺の子にしても怒らないだろう、って…」 結局彼女の話は振りだしに戻るのだった。
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