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他の四人がメークの下にも緊張を隠し切れないのに、生意気にもマリアは、女のようにしたたかに甘い媚びを漂わせていた。
その仮面をはぎ取り、血しぶかせてみたいと、どうしてか思った。
はぎ取るのはできた。
マリアという名に食らいついてきた時のあのあざとさ、こざかしさといったら…
しかし、そのハングリーさが、ZENNの心をとらえて離さなかった。
自分達が失ってしまった、しかし失ったことがあまりに惜しいものを、むき出しにマリアにぶつけられていた。
この男を手許に引き寄せたいとZENNは思い始めていた。
このときめきのような、しかし体の奥に巣食うような感情…
自宅で一人になってから、ZENNは愕然としていた。それは恋愛感情によく似ていたのである。
同性に対してこんな気持ちになるなんて、ZENNには初めてのことだった。
それがますますつのってきたのは、他のメジャー数社がMOONの獲得に動き出したと知ってからだった。
ZENNは焦った。
しかし移籍組の失敗が痛手になっていて、スタッフは慎重だった。
それをなんとか説得し、あの日ZENNはライヴハウスに走った。
そして…あんな卑怯なやり方で、マリアを抱いた。
しかし、マリアはベッドの中でもこざかしく、そのおかげでZENNは後ろめたさをいくらかぬぐうことができたような気がした。
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