第10章  華と月

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 MOONは、ギルティーの切り札だった。だから、マリアはあのようなことをしなくても十分デビューできたのである。 それゆえの後ろめたさ、自分の気持ちを知らせたいという思い…それをこらえていたのが由真の一件で一気に爆発した。 それでマリアを失った。  あの別れ以来、ZENNは体調がさえなかった。眠れない、食欲もない。 山田という人の詫びの手紙がついてからはますます気持ちが暗くなった。 目に見えてやせていくZENNに周囲はあわてた。  が、マリアとの一件が言えるわけもなく、彼は黙っていた…その本人が、どうも精神的なものと違うようだと思ったのは、胃に痛みもないのに違和感を覚えるようになってからだった。 仁が引きずるように病院に連れて行った。車の中で、おかしいのは胃だと思う、とZENNが震える声で告げると、仁もみるみる真っ青になった。  悪い予感どおり、ZENNは検査のため一週間の入院となり、結果は本人には胃のポリープと説明がされた。 生命に別条のあるものではないが、生活に支障をきたすので、入院して完治させるようにと医師に告げられた。 しかし、仁と母の百合子は…別室で、ZENNが末期の胃ガンであること、若いので進行が早いことから、あと三ヵ月の命であるということを告げられていたのだった。
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