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「MOONもとうとうミリオンセラーに東京ドームか…めでたいことだな。」
麗華がそうZENNにささやいたのは、ギルティー・ミュージックの重役の飲み会でのことだった。
近頃ではROSEのメンバー同士でも顔を合わせることはなく、肝心の麗華ともZENNが疎遠になりつつあるのを案じて仁が計画した席とは、当の二人も察している。
しかし、バンドが止まっているミュージシャンでもある二人には後に続く言葉はない。
困った麗華は、
「あとは…大きな声じゃ言えないけど、マリアもそろそろ結婚かな? 」
すると、驚いたことにZENNは凍り付いたように、麗華を見る。
「結婚、て…? 」
「ほら、あの、例の、デビュー前からずっと一緒に暮らしてる彼女だよ。やっとハタチになったって…」
ZENNは本当に何も知らない様子だった。が、突然やけのようにビールをあおると、押し黙った。そしてかすかに震えていた。
「何もそこまで怒らなくたって…」
だが、麗華もそこで言葉を失うほど彼の様子は変だった。
「悪いけど、今日は帰る。」
ZENNは立ち上がると、麗華も、出口のところにいた仁も振り切って店を飛び出した。
まさか…麗華は少したって気づいた。
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