第10章  華と月

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バンドに何かあっては、とマリアはびくびくしていたが、何ごともなかった。 そうなると、ZENNを失った痛みばかりがこたえた。  そんなある日、リハーサル前の楽屋でマリアは信じられないことを聞いた。 「ZENN社長が倒れたそうなので…みんなも体には気をつけて…」 「倒れた、って…」 思わずマリアは叫んでいた。村垣はそれに答えるように、 「詳しいことはまだわからないけど、夏のイベントもキャンセル、ダーリンのレコーディングは中断になったそうだ。」  胃のポリープと聞いても、マリア一人はそれを疑っていた。 仁から見舞いに行けると聞き、ツアーの合間に他のメンバーが行っても、二度と来るなと言われたとマリアは行かなかった。 そのくせ食事も喉を通らない。 見兼ねたタカネがZENNの見舞いにニッキーと行き、彼に口添えしてもらってマリアを許してくれるよう頼んだが、気持ちだけで結構と言われたと、しょげて帰ってきていた。  そんな時に、突然の仁からの呼び出しだった。 一緒に呼ばれた永山は別室で待たされ、会議室で、マリアは仁と二人きりになった。 「マリア、忙しい中申し訳ないが、兄とビデオユニットをやってくれないか。」 「えっ? 」 マリアも驚いた。
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