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「やるのかやらないのかはっきりしてくれ…って、これじゃあまるで兄貴だな…」
そう言う仁の目に、涙がにじんでいるのを見て、マリアにいやな予感が走った。
「マリアも噂は知ってるだろう? 噂の通りなんだ。兄は、実は、ガンなんだ。あと三ヵ月と医者には言われてる。」
マリアの頭は、仁の言葉を拒絶した。
「兄は自分一人でやると言ってるんだが、本当は君と仕事がしたいと思うんだ。」
「やらせて下さい。」
ツアーの後のオフを、マリアはあてるつもりだった。
ベッドの上に座ったZENNが、自分の顔を見てただ驚くばかりなのを見て、マリアは彼の衰えを感じた気がした。悲しかった。
「兄さん、マリアはビデオの件、OKしてくれたんだ。」
微笑もうとしたが、マリアはうまく笑みを作ることができなかった。が、それは違う意味にとれたらしく、仁は、また夕方に来るからと帰ってしまった。
二人きりになってしまうと、ZENNの方から口火を切った。
「聞いたか? 俺の病気のこと。俺は、あと、三ヵ月すればいなくなる。」
本人の口から聞かされても、マリアには信じられなかった。
「嫌な思いばかりさせてすまなかったな。でも、もう少しの辛抱だから…」
「ZENNさん! 」
マリアはZENNを抱き締めると、殴られてもいいと唇を唇でふさいだ。
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