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家に帰るとまだ由真は起きていた。マリアは黙って、例の手紙を差し出した。
「ZENNさんあてじゃない、どうしたの、この手紙。」
「いいから読めよ。」
読んだ由真も真っ青になったが、すぐに、
「アイツ、金がほしいのよ。この前断ったからって…」
「断った? 」
「どこで調べたのか、ここに押しかけてきたの。病気なんかじゃなかったわ。で、余裕があるならお金、貸してほしいって…でも、アイツのはだらしがないだけだもの。お情けでこの山田って人の店に雇われてるぐらいだもの。それが、マリアの稼いだお金を借りたいなんて…」
「でも、こんな写真まで見せられると、死んだ親父のことだけに、俺は心配になる。」
「マリア、私もこんなこと初めて聞いたのよ。なによ、自分だって、ミュージシャンに夢中になってたクセに、私には偉そうに…」
「俺の父親のことは話さなかったの? 」
「ロックバンドのことなんて、わかるわけないと思ったもの。」
マリアは両手で顔を覆った。
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