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『京(きょう)兄ちゃん、あたしね、彼氏が出来たの! 素敵な人でね、「君が好きだ」って…本当に信じられない展開! 知り合ったのは合コンだけど、すっごく大事にしてくれるし、優しいし、これって運命って気になっちゃった』
電話口で従妹の茉莉(まり)が嬉しそうに笑う。
そうか。幸せそうだね。俺も笑って返す。
『京兄ちゃんと同じ大学なんだって。知ってる?』
稲田次利(いなだ つぐと)って言うの。
「ああ、知ってる。今は学部は違うし、あっちが覚えているか解らないけど、中学三年間、同じ部活だったよ」
『ええっ!? 本当に!? じゃあ、明日のデートの時にでも次利に聞いてみよう!』
うふふ、といたずらっ子の笑い声。
可愛いね、茉莉。
「うん、そうしなよ」
俺も、含み笑いを返す。
『あ、いけない、お風呂入らなきゃ! それじゃあ京兄ちゃん、また電話するね?』
「解った。彼氏とお幸せに」
『ん、もう! からかわないで!』
おやすみなさいと言い合って、携帯電話を切った。
そして、俺は携帯の電話帳を開いて、一つの名前を見つめる。
稲田次利。
俺の彼氏。
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