第1章 俺の仕事

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写真で見るよりも良い男だと思った。 「あっ! ん、やぁ……」 ズン、と奥を突き上げられて、背中を反らせながら 自分でも笑えるくらいに甘ったるい、猫なで声を上げている。 男にしては細い腰を、もっと攻め立てるために後ろから抱きかかえられて、 繋がった場所が濡れて濃密な音を立てた。 「あ、あ、あぁ! そこ、奥、もっと、突いて、深い、のォ」 チラッと様子を伺ったら さっきカウンターで涼しげに笑っていた男が、苦しそうに顔を歪めている。 俺の中を 荒々しく貪ることに夢中になった、雄の顔をしていた。 「へぇ、あんた、プー太郎には見えないけど」 「違げぇよ、フリーターだ」 嘘つき。 あんたの仕事なら知ってるんだ。 社会派な記事を書く、記者さんだろ? そして今、とてもヤバいネタを追っている。 「お前は? 何してんの? 会社員には見えねぇし」 「俺は……フリーター」 一緒じゃねぇかと鼻で笑っている。 俺も嘘つきだ。 フリーター、アルバイトなんてしてないのに。 「楓(かえで)なんて、女みたいな名前してんのな」 「うるせぇよ」 まだ熱の残る火照った身体 ダルそうな溜め息。 汗で湿った髪を楓が鬱陶しそうにかき上げた。 ふわりと柔らかそうなクセのある髪がとても触り心地が良さそうで 俺は突き上げられながら 何度もズリ上がりそうになる身体を楓に捕まれながら その髪に手を伸ばした。 触れたら、とても気持ちが良かった。 快感と穏やかな心地が混ざり合って、なんていったらいいのかわからない感触に キュッと身体が反応した。 それが良かったらしく 楓がニヤっと色気たっぷりに笑いながら 中を奥までたっぷりと愛撫してくれた。 「岡島楓(おかじまかえで)」 確認じみているけれど、一度フルネームで名前を呼んだら チラッとこっちを見て笑っていた。 写真で見たあんたはもっと普通の男に思えた。 っていっても、人が行き交う雑路で撮った写真だから 斜め上からの角度だったし、人差し指ほどの大きさにしか映っていなかったけれど。 でもその小ささでもわかるくらいに、良い男だとは思ったんだ。
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