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その日は雲一つない、秋晴れ。
めずらしく屯所に馬越さんの叔母、お梅さんが訪ねてきた。
「うちのあほ甥が、紅葉狩りに行く言うて、弁当こしらえたんですけど、間違うて知り合いに持っていくぼた餅の重箱渡してしまってん……」
ちょうど、非番の井上さんが通りかかった。
「どこに行ったか分かりますか?」
「祇園で待ち合わせって言うてたから、清水あたりやろか……て、福田さん達と紅葉狩りやなかったん?」
山崎丞さんが通りすがりに
「祇園芸妓の朧はん。三味線上手いで。さっき二人にすれ違うたわ」
得意げに呟いて去って行った。
お梅さんは井上さんに重箱を渡した。
「頼んます。あのあほ、最近さかりが付いて。何かあったら、姉さんに殺されるわ」
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