勝手に最前戦1 「馬越、朧ちゃんと紅葉狩り」

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その日は雲一つない、秋晴れ。 めずらしく屯所に馬越さんの叔母、お梅さんが訪ねてきた。 「うちのあほ甥が、紅葉狩りに行く言うて、弁当こしらえたんですけど、間違うて知り合いに持っていくぼた餅の重箱渡してしまってん……」 ちょうど、非番の井上さんが通りかかった。 「どこに行ったか分かりますか?」 「祇園で待ち合わせって言うてたから、清水あたりやろか……て、福田さん達と紅葉狩りやなかったん?」 山崎丞さんが通りすがりに 「祇園芸妓の朧はん。三味線上手いで。さっき二人にすれ違うたわ」 得意げに呟いて去って行った。 お梅さんは井上さんに重箱を渡した。 「頼んます。あのあほ、最近さかりが付いて。何かあったら、姉さんに殺されるわ」
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