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「失礼する!」
柔術場の分厚い金属製の扉がいきなり開いて、巨漢の男たちがぞろぞろと入ってきた。みな100キロを超えるような大男ばかりだ。
「ちょっと見学させてもらおう。おい、後藤、しっかりやってるか」
四股(しこ)を踏んでいた相撲部の後藤が直立不動になった。緊張して顔がこわばっている。
「はい、部長。準備は入念におこなっております。先輩がたもわざわざお運びくださってありがとうございます」
クニがタツオの脇腹を突いていった。
「おいおい。とんでもない応援がきたな。相撲部は上下関係が厳しくて、上には絶対服従だっていってたぞ」
3年生の部長が叫んだ。
「後藤、貴様は相撲部の名誉を担(にな)っている。たかがクラス内の勝負で、しかも予選で負けるようなことになったら、どうなるかわかってるな」
後藤の顔が真っ赤になった。先輩が相撲部の1年生をとり囲んでいく。後藤よりひと回りおおきな部長がいった。
「気合を注入してやれ」
悲鳴のような声で後藤が叫んだ。
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