第1章

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「まあ、いいでしょう。オッケーです」 固い表情にしかならない私に明らかに妥協したカメラマンさんが、カメラのシャッター押すのをやめて、ニッコリ微笑んだ。 「しかし、ルイさん……いやリューマさん、テレビに出なくなっちゃったなんて もったいないですね。 イイ男なのに。 うちのカミサンはルイさんの大ファンでサイン頼まれてるんですけどいいですか?」 カメラマンさんはおずおずと紙とペンを差し出した。 もうすでにサインをもらうつもりでいたかのようだ。 「御安いご用ですよ。 芸能界やめて半年たつのに、忘れないでいてくれるのは嬉しいですね。」 リューマは笑顔で紙とペンを受け取って サラサラとペンを滑らせサインをした。 サイン頼まれるなんて、 まだまだ芸能人の貫禄だな……。 リューマもサインをサラサラ書いちゃうところが、一般人ではないのを自覚しちゃってるみたい。 「ありがとうございます」 カメラマンさんはサインを受け取ると、しっかり手に握りしめて嬉しそうに笑みを浮かべた。 「じゃあ、本部のスタジオに移りましょうか?」 吉川さんは時間を気にしながら、私達を促す。 「ミユキさんも一緒に移動しますか?」 「あ、私はこれから指名のお客様に入るのでリューマだけお願いします」 「え、そうなの?」 リューマが聞いてないよ的に私を見る。 「本部の撮影が終わったら美奈さんのショップに向かってね。 私も後から合流するから」 私も来月のリューマのスケジュールを把握するために行かなくちゃ。 「りょーかい」 ルイは立ち上がって、吉川さんとカメラマンさんについていく。 「お疲れさまです、リューマさん!」 リューマがサロンを出る寸前に、サロンスタイリストの相川さんに声をかけられていた。 吉川さん達はとっくに出て行ったというのに、 相川さんはキャピキャピしながらリューマにまとわりつき笑顔を振り撒いていて それを見てるとイラッとした。 相川さんは、チョーーーミーハーで 妻の私がいるっていうのに いつもお構い無しにリューマにまとわりついてくる。 リューマもイヤな顔せずに笑顔で返して、たまに肩を抱くスキンシップをするから それがまた更に私をイライラさせた。 リューマが、やたらスキンシップをする人なのは承知していたし あまり気にとめないようにしていたけど、 やっぱり私以外の女性にそうするのは 面白くない。
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