第1章

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「じゃあ、吉川さんが下で待ってるからオレ行かなくちゃ。ミオ、お仕事頑張って」 リューマがやっとまとわりついている相川さんをヤンワリ振りほどいていてサロンを出て行った。 ……またミオって呼んでるし! リューマは女の子の名前をよく下の名前で呼ぶ。 そんな風に呼ばれたら女子はリューマを意識してしまうのに、呼んでる本人は、なんの意識もないようで、 『なんで下の名前で呼んだらいけないの?』 って罪の意識なく言ってのけるから 私は何も言えなかった。 心の狭い女だと思われるのも イヤだし……。 でも、ヤキモチ妬かないではいられいよ。 リューマが親しそうに女子を下の名前で呼ぶなんて。 リューマと結婚したからって 自分に縛っておける自信が全然ないから。 余計にそういうささいな事が気になって、不安を煽られる。 「ナニしかめっ面してんの?」 ヨシがフロントにいた私の横にいつの間にか立っていた。 「しかめっ面なんて……してないよ」 相川さんが、リューマから離れた後、上機嫌で、戻ってきた。 私とバチッと目が合うとニコリと不敵な笑みを返す。 「いいなー。須田さん、あんな素敵な人が旦那さんだなんて」 嫌味っぽく言い放って、相川さんは自分の持ち場に戻っていった。 私、結婚したから本橋なんですけど! 「今度はムクれてる」 ヨシが私の顔を覗きこみながら ニヤニヤしている。 「だって!」 つい言葉に力がこもる。 「だよなー。 ルイもなんであんな見せつけるような事、平気で出来るんだろうな?」 ヨシは小さくため息をついて首を傾げた。 ヨシは気づいていた。 私の気持ち。 「やっぱりそう思うでしょ?!」 「……まあな。 アイツ、チャラいしな。結婚しても」 ヨシは苦笑している。 確かに、リューマはチャラい。 女子に優しすぎるところがある。 それが気にくわないんだけど 本人には言えない。
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