第1章

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「だいたい、俺らでも相川さんの事ミオなんて呼んだりしないのにな」 「でしょ。おかしいよね。私の夫として紹介してるのにさ、職場の女のコを下の名前で呼ぶなんて。 神経ふつうじゃない気するよ。 だから相川さんだって、調子になってリューマにベタベタするし」 「アハハ。悩み尽きないね。芸能界辞めちゃうし、マネージメントしなきゃ、リューマは仕事こなさないし?」 「そうだよ。 始めの頃は自分から、スポンサー探しして熱心だったのに、ある程度仕事取れるようになったら、後は私に全部お任せなんだもん。」 私は鼻を膨らませながら ヨシに愚痴をぶつけて 指名のお客様のカルテに目を通す。 自由奔放なリューマは人の気持ちお構い無しで 既婚の自覚なしに、女のコをその気にさせてしまうーーーー。 あんなカッコイイ容姿で優しく親しくされたら だいたい女のコは舞い上がってしまう。 私もリューマと始めに会った頃は すぐに“ミユキ“って呼ばれて、手を握られて ドキドキしていた。 でも、リューマは本当に寂しがり屋で、人懐っこくてスキンシップに抵抗がない人なんだ。 「私、指名のお客様終わったら、リューマのお世話になってるデザイナーさんの所に移動するね」 隣にいるヨシを見上げて言った。 ヨシは目元の彫りが深くて、顔立ちが整った渋い感じのイケメン店長。 リューマとは違って硬派な、堅実そうなスタイリストだった。 ヨシとは過去に2年付き合っていて、 私がリューマの専属ヘアメイクになってから別れを告げた。 私はリューマを高校の時から大好きだったから 乗り換えたみたいにヨシとは決別をしたんだけども ヨシは兄貴みたいな存在になっていて なんでも素をさらけ出してしまう。 そして受け止めてくれるヨシは好き。 別れる時は薄情オンナ呼ばわりされて、 大変だったけど それを乗り越えて今、何でも言い合えて相談できる仲間になれた。 「あんまし、四六時中 夫婦一緒にいるのも、ケンカの種まくようなもんだから リューマにはマネージャーつけた方がいいんじゃないの?」 ヨシの言う事はもっともなんだけど……。 「マネージャーなんてつけるほどの芸能人じゃなくなったし、仕事だってそんなにあるわけじゃないから……とうぶんは私がやりこなさないといけないかな」 「あんましムリすんな。」 ヨシの私を気遣う声が優しい。
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