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「だいたい、俺らでも相川さんの事ミオなんて呼んだりしないのにな」
「でしょ。おかしいよね。私の夫として紹介してるのにさ、職場の女のコを下の名前で呼ぶなんて。
神経ふつうじゃない気するよ。
だから相川さんだって、調子になってリューマにベタベタするし」
「アハハ。悩み尽きないね。芸能界辞めちゃうし、マネージメントしなきゃ、リューマは仕事こなさないし?」
「そうだよ。
始めの頃は自分から、スポンサー探しして熱心だったのに、ある程度仕事取れるようになったら、後は私に全部お任せなんだもん。」
私は鼻を膨らませながら
ヨシに愚痴をぶつけて
指名のお客様のカルテに目を通す。
自由奔放なリューマは人の気持ちお構い無しで
既婚の自覚なしに、女のコをその気にさせてしまうーーーー。
あんなカッコイイ容姿で優しく親しくされたら
だいたい女のコは舞い上がってしまう。
私もリューマと始めに会った頃は
すぐに“ミユキ“って呼ばれて、手を握られて
ドキドキしていた。
でも、リューマは本当に寂しがり屋で、人懐っこくてスキンシップに抵抗がない人なんだ。
「私、指名のお客様終わったら、リューマのお世話になってるデザイナーさんの所に移動するね」
隣にいるヨシを見上げて言った。
ヨシは目元の彫りが深くて、顔立ちが整った渋い感じのイケメン店長。
リューマとは違って硬派な、堅実そうなスタイリストだった。
ヨシとは過去に2年付き合っていて、
私がリューマの専属ヘアメイクになってから別れを告げた。
私はリューマを高校の時から大好きだったから
乗り換えたみたいにヨシとは決別をしたんだけども
ヨシは兄貴みたいな存在になっていて
なんでも素をさらけ出してしまう。
そして受け止めてくれるヨシは好き。
別れる時は薄情オンナ呼ばわりされて、
大変だったけど
それを乗り越えて今、何でも言い合えて相談できる仲間になれた。
「あんまし、四六時中 夫婦一緒にいるのも、ケンカの種まくようなもんだから
リューマにはマネージャーつけた方がいいんじゃないの?」
ヨシの言う事はもっともなんだけど……。
「マネージャーなんてつけるほどの芸能人じゃなくなったし、仕事だってそんなにあるわけじゃないから……とうぶんは私がやりこなさないといけないかな」
「あんましムリすんな。」
ヨシの私を気遣う声が優しい。
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