第1章

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「オレ、地味に会社勤めをしてみたかったのにな」 リューマは芸能界を辞めて、 『広告代理店の仕事でもしようかなって』って言ってたけど 経験もなければ学歴もなかった。 ハタチの時にホストクラブで源氏名『ルイ』として、指名No.1を誇っていた酒好きのリューマ。 事務所の社長直々に新宿でスカウトされて モデルの仕事を始めた。 それから、リューマは本領を発揮して 映画デビューを果たす。 ルックスだけに頼らない実力派のリューマは 連続ドラマでは常に主役を演じ 私はそんなリューマに 恋焦がれていた。 専属ヘアメイクになって 夢のようなリューマからのプロボーズで 結婚できたのは良かったけど リューマは無職になってしまったから 先行き不安な結婚生活だった。 「ウチの会社が専属モデルで雇ってくれたから良かったじゃん!」 リューマは元有名人というのもあって Hair Make Grosslyの広告塔になってくれるのは 広報手段としては申し分ないというワケで ムリヤリ私が会社の運営部に持ち掛けたのだけど 即OKをもらう事ができた。 「でも、フリーターと変わんないだろ。 会社勤めの方が安定してんのに……」 ルイは夕べは夜遅くまで 大好きなテロリズムアクションのシリーズの映画を観ていたから 寝起きが悪い。 リューマが俳優やっていた頃は 1日三時間の睡眠でいたのに 結婚してからは、やたら睡眠欲が強くなったようで 仕事が入ってない時は 1日中 寝ている時もある。 「だって、そうゆう仕事は経歴が活かされないでしょう?年齢的にこれから頭脳派や営業職に挑むのは難しいんじゃない?」 「そんなん、勝手に決めんなよ。 だったら、ホストクラブでもやりたかったな」 リューマはダルそうに上半身を起こして背伸びをした。 「シャワー浴びるかァ。仕事があるだけ有り難いか」 「そうだよ。いいギャラ払ってくれてるじゃん、ウチの会社。普通の会社勤めの何倍もいいよ?」 「そうなの? CM1本で貰ってたギャラの何十分の一程度なのに?」 「もらいすぎだったんだってば」 「金銭感覚がないんだよ、オレ」 リューマは芸能界を引退するキッカケになった スキャンダルに多額の慰謝料を払っていた。 その額に驚いたんだけど リューマはなんて事ないように支払ったというから 目を白黒してしまった。
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