第1章

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「急かしといて、ミユキの方が準備出来てないじゃん。オレ、外で待ってるよ」 散らかっていたDVDの片付けをして支度をしていたら、 リューマに逆に急かされてしまった。 「メイク念入りにしすぎなんじゃん?」 リューマは、玄関で靴を履きながら ボソッと言った。 「さり気無くひどい事言うなー! リューマと一緒にいたら、美に落差がありすぎて、こっちは大変なんだから。 人の気も知らないでー」 私は慌てて髪の毛をアップにしてセットを終えると 玄関まで急ぎブーツを履く。 「よし、行こ!」 顔を上げてリューマの背中を押そうとしたらリューマは体を反転にして 私の顔を覗きこんだと思ったら チュッ! と唇にキスをしてきた。 ドキッ! 不意打ちキスに心臓が跳ねる。 リップグロスつけたばっかりなのに。 「だからメイクに時間かけるのは無駄だって言ったじゃん」 驚いて顔を赤くさせた私をリューマは楽しそうに見下ろした。 ……そう。 リップグロスはつけなきゃ良かった。 リューマはすぐに不意打ちでキスしてくるから。 私たちは結婚して半年も満たない新婚カップルで キスは人目を盗んでよくしてる。 リューマと過ごす毎日は、ケンカもするけど幸せそのものだった。 リューマの背中を押して外を出ると 季節は秋も終わりにさしかかっていて 空気は冷たく感じられた。 「うっ……。 急に寒くなったね」 通りすがる人たちはもうすでにコートを羽織っている人たちもいた。 「手つなごっか」 「……うん」 駅まで5分の距離を二人手をつないで歩く。 朝から仲つむまじく手をつないで 夫婦で出勤するカップルはきっと私達くらいだろうな。 とにかくリューマは目立つから 周りの視線がイタイんだけども 芸能界にいた時はずっと 人目を気にしなければいけない人だったから 今は開放的に普通の生活ができるのを楽しんでいるようだった。 「ところでさ、リューマはなんでテロリストに興味を持つの?」 眠そうな顔で電車の壁に寄りかかるリューマを見上げた。 メイクに時間をかける私と違って リューマは本当に綺麗で その端正な顔立ちに 私はいつも見とれてしまう。
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