第1章

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「おはよーございまーす!」 サロンに入っていくと すでにオープンしている店内は既にお客さまもいらっしゃっていて みんなスタッフは入客をしている。 店長のヨシも、カットの施術中だったけど チラリと私たちに視線を流すと笑みを飛ばした。 高倉義一 私の元カレ。 Hair Make GrosslyのN支店の店長。 「あ、本橋さん、こちらにお願いします」 運営部の吉川さんが私たちを見つけてサロンの端のセット面に手招きをした。 そこにはカメラマンさんや照明の人たちがすでにスタンバイしていた。 「よろしくお願いします!」 リューマは眠そうだった顔から一変して 白い歯を見せながら、元気な声で挨拶して頭を下げた。 さすが挨拶は大事だと豪語していたリューマ。 元俳優で有名人だったと言うのに、 そんな態度を微塵も見せない。 「こちらこそよろしくお願いします」 運営部の吉川さんもニコニコしながら頭を、下げる。 リューマのこの謙虚なところが私はすごく好き。 「リューマさんが、お客様、ミユキさんが担当のスタイリストという設定でお願いします。セットしているシーンを撮ります。」 吉川さんは、カメラマンさんにも説明しながらアングルや、雑誌の広告欄に載せる意図の内容を説明していた。 私は元俳優の本橋ルイの専属ヘアメイクしてるヘアスタイリストとして一部の人に浸透している。 店内のお客様も私たちが気になるようで視線が集まった。 「店内のお客様に迷惑がかからないように、ここでの撮影は簡単に済まして、そのあとは本部のスタジオに移動します」 吉川さんはそう言うと時計をチラッと見た。 私にセットされている 本橋リューマが、カメラマンに至近距離で撮られている。 「さすが……ですねー。 リューマさんは表情が自然で、カメラに慣れてますね。 ミユキさんは、もうちょっと口元を緩めるカンジで微笑んでみてください」 カメラマンさんがシャッターを押すのをやめてそう言うと、リューマはプッと吹き出した。 私は写真を撮られるのが苦手で、 いつも何度取り直しても、表情が固いままで写っていた。 それを見る度にリューマが、 『どうしてこうなるの?』 って人の顔みていつも肩を揺らして笑うから 今回も意識し過ぎて不自然な顔にしかならない。
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