1章 脱出開始

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まあ、そうもこうも言っていられないということで、暇つぶしも兼ねて脱出の試みが始まった。 友人二人はそばの棚を、僕は近くにあった別の棚を調べることとした。 ベッドから降りて確認したところ、僕が探そうと思った棚は本棚らしい。あらゆる種類の辞書が並んでいる。 …が、中にはやけに存在感を放つ辞書もあった。例えばこれ。 「日本お笑い大全」 何が書いてあるのか気になったが、見ている場合ではないし、第一足枷が邪魔で届かない。実に残念なことだ。 「未来、この棚開かない~っ」 唐突にそんな気の抜ける声がした。見ると、和歌がそばの棚の戸口に手をかけて必死に引っ張っていた。棚が傾いているので、本当に開かないようだ。 というか、言い方が男じゃないと思うんだけど… とりあえず僕は本棚に手を出すのを止めた。これ以上はなにもなさそうだ。 そして、次に探せそうなところを探す。ベッドの下は、激しくホコリまみれだったので諦めたが、部屋の真ん中にある円卓が目に入った。 円卓には目覚まし時計と何らかの薬の箱、そしてもう一つ小さな箱があった。 小さな箱の中身が気になるので、手足をピンと張り、必死の思いで箱を手繰り寄せた。 正確に言うと、机ごと引きずった。 傷ついたコンクリ床には目もくれず、机の上に集中した。 目覚まし時計によると、今は午後12時23分らしい。カゲロウ○イズかよ。 まず、小さい箱に手を伸ばす。小さい箱はその見た目通りの軽さであった。願いを込めながら箱を開ける。 鍵が出てきた。 正確に言うと、鍵がプリントされた厚紙が出てきた。 「よし、とりあえず脱出できたらタカを問答無用で殴ろうか」 「ちょ、ちょっと未来!?それめちゃくちゃ恐いぞ!」 危ない、本音が出てしまった。
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