1章 脱出開始

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次に、薬箱の方を観察することにした。 友人二人は、足枷のせいで見るものが先ほどの鍵のかかった棚しかなかったので、こちらを眺めている。 箱を開けると…紙袋が出てきた。 それも、お正月にデパートが売り出す福袋的なやつではなく、粉薬なんかが入るような半透明の小袋である。 だが、薬袋とは少し違った。何かというと、 その袋の中には鍵が入っていて、さらに袋を構成する紙が特殊なのである。 幸助に見せたところ、和歌が教えてくれた。 「その紙は水にぬれるとすぐに破れるけど、こういう風に乾燥してると1tの力まで耐久できるよ」 なんだそのチート設定の紙はっ!? いや、紙にチートがあるのかといえば謎だが… 「あ、でも気をつけて。なんか表面に薬物が付いてるから」 ちょっ!!唾液でやろうとした寸前で言わないで! 10分経過。 和歌は疲れて寝始めた。 幸助は目をごしごし擦りながら、僕を見ている。 僕は、揺らぐ決意を何度も改め、ついに薬袋をなめた。 その後すぐに破れる紙袋。 そこから出てきた鍵は、自分の足枷となっていた手錠の鍵穴と一致し、僕は自由度を拡大した。 そのままラジオ体操を始める僕。 まずは腕を上にあげて、大きく背伸びの― 「おいっ俺をまず助けてくれよ!」 あ、忘れてた。 自分の足枷を解いた鍵を彼の足枷に使ったところ、彼もある程度自由になった。 そのままラジオ体操を始める幸助。 まずは腕を上にあげて、大きく背伸びの― 「お前もやってるじゃねぇか!!」 「あ、」 しまった、という風に戻ってくる幸助。 その瞬間。 僕は、身体の芯が熱くなったような錯覚を覚えた。 身体の危険を感じ、とりあえず倒れてもいいようにベッドに戻る僕。 「っおい!どうした!」 幸助が心配してくれている… 「いや、なんか身体が熱くなって…っ」 意識が朦朧としてきた。 そこから、幸助の言葉の意味も理解できなくなるくらいになるまでそう時間はかからなかった。
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