第1章  はじまりの音

11/23
前へ
/34ページ
次へ
   長い午前中の講義が終わって、ようやく昼休みになった。 昼休みになると、近藤は決まって俺の席にやってくる。 「お前今日飯なによ」 「から揚げ」 「おっ、いいなー。一ついただきー!」 「あ!おまっ!近藤!」 近藤はいつも俺の弁当のおかずを一つはかっさらって行く。 窃盗罪だ。 「荒木、それくらいでムキになるとお前の価値が下がるぞ」 「なんだよ御幸その言い方」 「事実を言ったまでだ。近藤のレベルに合わせる必要はない」 眼鏡を推しあげながら冷静に言い放ったのは、俺の隣の席の御幸だ。 1年から同じクラスだったせいもあり、基本的にはこの3人で過ごしていることが多い。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加