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お店を出ると、四純さんは、あたしをば待っちょった。
『真弓さん……気分をそこないませんでしたか?』
『いいえ……ご馳走さまでした。
食べ残したのは残念じゃったけど、楽しいひとときじゃったょ』
四純さんは、済まない………って言いながら、
本当に済まなそうな表情をされちょった。
『真弓さん……送りますから』
四純さんはね、寂しげな表情を浮かべて……そう言ったんじゃょ。
『送るって……』
あたしには、その言葉の意味は分かってたけど……。
『……あ、そうですよね。
……真弓さん、送る前に少し歩きませんか』
『……はい』
四純さんは、たぶん裕神さんと、あたしのことで悩んでるんじゃ……。
あたし達二人を天秤に掛けてるつもりじゃないけどね……。
歩きながら腕も組めなくて……
あたしは、なんだか寂しい気持ちにもなっちょった。
『寒いなか……僕は本当に間の抜けた男なんですね……』
あたしは見上げて……
『誰かに言われたとですか?』
『前の妻……
裕神にそう言われました……』
『裕神さんに……』
黙って頷きながら……
あたしは、酔いが醒めたような気分になってきたよ。
ワインじゃないよ、雑誌の占いじゃよ。
あんな馬鹿げた占いを信じた、あたしと四純さんの恋は間違ってるって!
あたしは遠く闇の中にうっすらと望める……
樅の木のてっぺんを眺めながら、
絵一のことを思い浮かべてそう思ったんだがね。
『真弓さん』
四純はさんは突然振り向いた。
『真弓さん……
僕が、あなたと待ち合わせをしたのは』
『四純さん、
それ以上は言わんで下さな』
『え………』
『四純さんが、それ以上のことを言うと、
四純さんも、裕神さんも、あたしも皆が不幸な道を歩んでしまうとょ』
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