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『……そうですね』
四純さんの目に、あたしを見つめる輝きが薄れていったょ。
『真弓さん……あなたへの想いの言葉が出せない……』
『四純さん、言葉が出せないのは、四純さんの心の片隅に、
裕神さんが潜んで居るからじゃよ』
『……そうなのでしょうか』
四純さんは、途方に暮れる表情をしながらあたしを見るんだがね。
『そうなんじゃよ、四純さん。
そいでね、裕神さんの心の中にも、
四純さんがいっぱい居るんじゃよ。うじゃぐゃって』
『うじゃぐじゃですか……』
『そう、うじゃぐじゃよ。
だからね、あたしなんかに構ってる場合じゃないよ』
『………』
四純さんは、あたしから目をそらした……。
『四純さん、あたし達のお付き合いは、絵空事の雑誌の占いじゃがね。
血の通って、感情ある裕神さんと比べたら、
お話しにもならんがね。あたしが言うのも何だけど』
『………』
『四純さん、裕神さんはあなたを待っちょるんだよ』
あたしは、あたしにそう言ってたんだ。
絵一が待ってるんだよってね……。
そんな中、四純さんは、またあたしを見つめたよ。
『真弓さん……
僕は……自分の気持ちが今、はっきりと分かりました』『……ぇ』
『真弓さん……送りますょ』
あたしは、しばらくして……
四純さんの言う言葉を理解した。
そうすると、部屋のかたすみに置き去りにした人形のように、
絵一のことが物凄く心配になって来たんだがね!
『四純さん、理解したなら……あたしに構わんで下さいじゃ』
『真弓さんそれじゃぁ……僕の』
『四純さん、ここでさよならするがね。
さぁ、四純さんは裕神さんの処へ』
『………あ』
『四純さん、あなたのキスの味は……忘れんよ~~~~』
そう叫ぶあたしは、
手を振りながらそこから逃げるようにして、駆けて行ったんじゃょ……
絵一が待ってるかも知れない、あの樅の木の下へと………。
▽
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