第2章

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『あの女、』 今日という今日は絶対ブッ飛ばす。 あれから秘書課へと猛ダッシュで行ったが私個人が呼び出されたという事実はどこにもなく、ただ単に秘書課から総務部への事務連絡などが書かれた配布書類を取りに来いというもので別に急ぐ必要もましてや私が取りに来る必要もなかった。 更に、あんなに恐れていた秘書課だったが実際は皆さん優しそうな人ばかりで、私があの噂を聞いたのもたしか千奈美ちゃんだったはずなので確実にデマだということがわかった。 …あの女、人のことを先輩やらパイセンだと呼んでるくせに全然私のことを敬ってねぇ。 『今日こそガツンと言ってやる…っ!!』 「ぅおっ桂木?」 『あら高津』 「お前も秘書課に書類取りに来たの?」 『うん。ちょっと女狐に騙されて』 「…懲りねえなぁアイツもお前も」 廊下の角を曲がったところで高津に出会った。どうやらコイツも秘書課へ書類を取りに行くらしい。 『二日酔い大丈夫?』 「あぁ午前中は死んでたけど昼飯食ったら治った。つーか昨日お前俺のこと放置して帰っただろ」 『人聞きの悪い。ちゃんとタクシーの運転手さんに任せたんだから放置とは違うでしょ』 「仮にも同期だぜ?仲間が潰れて動けねぇなら最後まで面倒みるのが普通だろーが」 『やだよ。ただでさえ酔い潰れて面倒だったのに更には失恋しただのなんだのぐちぐち言ってるような男の面倒みるなんて』 「…え?」 急に顔色を変えた高津。 「……失恋って俺?」 『うん。梨恵ちゃんと別れたんでしょ?』 「それ俺が言った?」 『うん。別れたぁぁぁって叫んでた』 「……。」 『まぁまぁ落ち込むなよ若者よ。誰だって失恋くらいするものさ』 「……うるせ」 『なんなら今日も飲みに行く?高津も明日休みでしょ?』 「…休み」 『失恋の痛みなんて酒飲んで寝たら忘れるって。パァーッと飲んでパァーッと忘れたらいいじゃん。今日の仕事定時で終われる?』 「…たぶん」 『じゃあ裏口で待ってるから仕事終わったら集合ってことで』 「いや、俺今日営業部の先輩と飲みに行くからパス。また今度な」 『……。』 心配した私が損したわ。
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