第1章

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別に今までモテなかったわけではない。 学生時代にはそれなりに恋愛もしたし、惚れた晴れたの経験は一通り人並みにしてきた。 社会人になってからも数は少ないけど変わらず恋愛してきたつもりだし、合コンに行けば必ず連絡先を聞かれる。 見た目も割といい感じだと思うし、性格だって特別悪いってわけではないと思う。あくまで自己評価だけど。 それなのに、 『ねぇ千奈美ちゃん。どうして私は3年も彼氏がいないのかな?』 「やだせんぱぁい。3年じゃなくて4年ですよ4年。なにちゃっかりサバ読んでるんですかぁ?」 『わかった訂正する。ねぇ千奈美ちゃん。どうして私は4年も彼氏がいないのかな?』 「やだせんぱぁい。そんなの鏡見れば一発でわかるじゃないですかぁ。仕事中なんですからそんな下らないこと言ってないでちゃんと働いてくださいよぉ。この給料ドロボー」 『……。』 何故私には彼氏が出来ないんだろう。 「さっきから思ってたんですけどパイセン昨日もお酒飲みましたぁ?」 『え、わかる?なんで?』 「わかるもなにも、今朝からずっとパイセンの近くに立つと酔っ払いのオッサンみたいな匂いがしてるんですぅ。もしかしてまたお風呂も入らず出社したんですかぁ?信じらんなぁい」 『いやぁ思った以上に深酒しちゃってさ。起きたら時間ギリギリでシャワー浴びる暇もなかったんだよね。てへへ』 「ちょっとそれ以上近寄らないでもらえますかぁ?今日この後、この間言ってた商社マンとデートなんで匂いうつったりしたら困りますぅ」 『なっ、千奈美ちゃんまたデート?!てか、この間の銀行マンとはどうなったわけ!』 「ちょっと芽依先輩ほんっと臭いんで近寄らないで下さぁい。次私に近寄ったら眼球に直接香水振り掛けますからねぇ」 『……。』 同僚の千奈美ちゃんが制服のポケットから小さな香水の瓶を取り出したので私は素早く彼女から離れた。
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