第1章

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何度も言うが、私は決してモテなかったわけではない。 これまでだって普通に彼氏はいたし、言い寄られることだってあった。合コンでも必ず一人には連絡先を聞かれていたし、付き合うまではいかなくともいい感じの雰囲気になってデートを重ねた人だって数人いた。 「パイセンの妄想力って凄いですよねぇ」 『妄想じゃない事実を語ってるまでです!!』 桂木芽依(かつらぎ めい)27歳。 中小の食品メーカー【ワールド株式会社】で働く普通のOL。2年前までは商品開発部にいたが、なんやかんやあって現在は総務部で働いている。 未だ独身。 最近は晩婚らしいし、27歳なんてまだ結婚を焦る年齢ではないとは思う。そりゃあまわりは結婚や出産が増えてきて、親友も来月結婚するけどまだ焦るには早い年齢だと思う……きっと。 だがしかし、いくら晩婚といえど27歳という年齢は世間一般から見ても立派な結婚適齢期。そんな適齢期に私はこんなにも女を枯らしていてもいいのだろうか。 「パイセンは男を見る目がなさすぎるんですよぉ。てか身の程知らず?」 先ほどから私に辛辣な言葉ばかりを当ててくるこの子は綾瀬千奈美(あやせ ちやみ)。 外見はべらぼうに良いが中身はクソだ。毎日口を開けば私のハートを削るような毒舌しか言わないような、外見はS級内面は別の意味でドS級の恐ろしい子。だけど根は悪い子ではない。 私は大学を卒業後、この子は高校を卒業後に同期で入社して5年経つが、私たちはいつの間にか仲良くなっていた。 『てかさ、同期なんだしいい加減私のことを“先輩”とか“パイセン”とかって呼ぶのやめない?普通に芽依でいいよ芽依で。その方が楽だし』 「嫌ですぅ」 『なんでよ』 「だってぇ入社時期は同じでもパイセンは私より4つも年上なんですからこれからもずっと先輩もしくはパイセンって呼ばせてもらいますぅ」 『だからそれが嫌なんだよ!!いいじゃん4つくらい離れてても!!4つなんてたいして変わらないじゃん!!』 「“4つくらい”じゃなくて“4つも”ですぅ。やだぁせんぱぁいジェネレーションギャップ?」 『何がどうなってお前はジェネレーションにギャップを感じたんだ!!てか敬語もやめてってば!!タメ口でいいよタメ口で!!』 「俄然無視ですぅ」 千奈美ちゃんは本当に私のことを無視してパソコンで仕事を始めた。
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