第1章

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「よっ」 『あれ高津、あんた外回り終わったの?』 「余裕で午前中に2社契約させて今から契約書の準備するとこ」 『ほぉ~すごいじゃん。さすが営業部トップの成績を誇るお方は違いますなぁ』 「ハッハッハッ俺の華麗なるマウステクニックを使えばチョロいもんよ」 パソコンへと向かい直してさぁ今から仕事再開だとしてたときに後ろから顔を出したコイツは高津陵介(たかつ りょうすけ)。 私と同い年の27歳で千奈美ちゃんと私と高津は3人共同期。高津は営業部に配属されているが、入社当時私たち3人は同じ商品開発部にいてその頃から仲が良く昔はしょっちゅう飲みに行っていた。 『まさか高津に営業の才能があったとはねぇ』 「バーカ俺は何でも一通りのことは人並み以上にこなせる器用な奴なの。こう見えて何でもできちゃうの俺って」 「高津さぁん器用貧乏って言葉知ってますぅ?」 「げっ女狐」 千奈美ちゃんを見た高津の表情があからさまに歪んだ。 昔は3人でどこかに出掛けたり飲みに行ったりとしていたのにいつの間にかそれがなくなったのは、この二人の仲が悪くなったからだ。 「…おい桂木、お前まだこんな女狐と仲良くなんかしてんの?」 「うふふ~高津さんひどぉい」 「やめろその薄気味悪い喋り方。虫酸が走る」 「嫌ですぅ。高津さんの方こそ毎日その不快な顔を見せにわざわざ離れた総務部まで来るのやめてもらえますぅ?イライラしまぁす」 「勝手にイライラしてろボケ」 「やだぁ怒った顔も尚更不愉快~。早く営業部の住処に帰って下さぁい。万年平社員が」 「んだとこのアマ!!!」 「大体、2社の契約とったからって浮かれてるみたいですけど、その2社の契約ってのも単価低い契約なんでしょ?その程度で威張らないでもらえます?」 「…ぐぬぬっっっ!!」 「やだぁ高津さん酷い顔ぉ~。素っぴんの芽依先輩と同じくらいひどぉい」 あれ、何故か私まで罵倒されてるぞと思ったけれど口を挟むことはやめよう。こっちまで巻き込まれかねない。 男の前ではブリブリすぎるくらいブリッ子の千奈美ちゃんが唯一本性を見せる男でもある高津。端から見ると結構お似合いなんじゃないか?とも思うけど、そんなこと本人たちに言ったら殺されそうなので言えません。
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