第1章

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『まぁまぁ二人とも落ち着いて。で、高津は何か用事でもあったわけ?』 口を挟むことはやめようとは思っていたけど放っておくといつまでも口喧嘩が終わらない二人を見かねて私が口を開いた。 いやね、部屋の奥に座ってる部長があからさまにこっちを見て怒ってらっしゃるんですよ。いくら【仏の部長】と呼ばれてるような普段は優しすぎるくらい優しい部長でも毎日こんなんが続けられてたらそりゃ怒るわな。 …あとで謝りにいっとこう。 「…ん、あぁそうだった。桂木今夜暇?久しぶりに飲みに行かねぇ?」 『今夜?ん~いいよ。どうせ一人で帰っても飲むつもりだったし』 「んじゃ決定な。いやぁ~今夜のビールは格別だろうなぁ。なんてったって2社からも契約とれたんだからな」 「…そんな小銭程度の契約で喜んでるなんて本当に高津さんって底が見えてるというか出世しない甲斐性なしの男間違いなしというか」 「黙れ女狐。お前に喋ってねぇ」 『あ、そうだ千奈美ちゃんも一緒に行こうよ。久しぶりに三人で飲みたいなぁ』 「ばかお前なに勝手に女狐なんか誘っ、」 「すみません芽依せんぱぁい。パイセンと飲みたいのは山々なんですけど今日は商社マンとのデートがあるので行けませぇん」 「ほらな。コイツはこういう奴なんだよ。年がら年中男を追い掛け回しやがって。このビッチが」 『また高津はそういうことばっかり言って。んじゃ残念だけど千奈美ちゃんと飲むのはまた今度ということで』 「あっ、パイセンも一緒に行きますぅ?今から言えば商社マンの友達とか連れてきてくれるかもぉ」 『えっまじで?!行く行く行きま、……あ痛ェっ!!』 「ばか野郎。お前は今夜俺と飲みに行くんだろーが。なに商社マンに釣られてんだよバカ」 終わったら裏口に集合な、と言って高津は去っていった。
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