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山と山の間に切り開いて作られた墓地に続く坂道を一人の男が歩いている。
年の頃は三十路を過ぎたくらいだろうか、濃緑色の制服に身を包んでいても彼を自衛官と思う者はそう多くないだろう。
どう見ても、半人前の学者、売れない漫画家のようである制服の名札に「山部生眞」と書いてある彼がこの話の主人公である…
山部は不意に歩みを止めて墓の前で立ち止まる。
どうやら、ここが目的地のようだ。
「あんたが死んでもう10年か…」
墓の前で呟く。
墓の前だろうと別の場所だろうとこんなにはっきりと独り言を言う奴はかなりイタい奴だが、一応、演出である彼はそこまでイタい奴ではない…
「俺、あんたと同じ立場になりましたよ。あれからいろんなものが変わっちまった…」
さらに山部は続けた。
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