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「岡山は自衛隊を辞めて便利屋になりました…今は所在不明です。中川は三年前の戦いで流れ弾に当たり戦死…伊藤は陸上で実業団へ、西巻はお笑いの道に進み、小関は何を思ったのかフードファイターになりました。大嶽は性格が180度変わって猛将の二つ名で呼ばれる男になりました…」
山部の瞳に憂いの色が浮かぶ。
この国は、混迷の時を迎えていた…10年前に隣国との間に小競り合いが起こり、しばしば武力衝突を繰り返していた…
去年、国連の仲介で停戦したが、この国の人間はいろいろなものを失っていた…
「俺はもう、何も失いたくないと思っていたんだがな…」
山部は自嘲するように呟くと、一陣の風が彼を取り巻くように吹き抜けた。
呆然と風が吹き抜けて行った方向を眺めていたが、墓前に向き直り、持っていた花束を放り投げる。
「いつまでも陸士じゃないんですけどね。たぶん、もう来ません。」
そう言うと背を向けて来た道を引き返して行った。
どうして、このような行動をしたか理解に苦しむところだが、彼は行動することにしたらしい…
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