第1章

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防衛省は、中川を殺した犯人をあの戦いの後に辞めた人間が犯人だと考えていた。その理由の一つが、昇任だ。 10年前からの戦いで多くの犠牲を出した自衛隊は、3年前の戦いが終わった時にそれまでの戦いに参加していた全ての隊員に昇任と特別昇給を約束した。 「それを蹴ってまで退職した奴が怪しい…か。」 山部はため息をつきながら資料を伏せた。岡山、伊藤、西巻、小関あの戦いを終えた時に確かにどこかいつもとは違って見えた。 「何を調べているんです?」 不意に声をかけられ山部は文字通り飛び上がった。 「大嶽か…脅かすなよ。」 そこには班員である大嶽弘記が立っていた、大嶽は3年前の戦いにおいても共に戦った直属の部下だ。 そして、辞めていった4人と同様に中川殺しの容疑者の一人だ。 現場の方に顔出さない班長に指示を仰ぎに来たらしい… 「やることがないなら休暇を取ってくれ。俺も手が離せないし、一石二鳥だろ。」 怪しむ大嶽を説得し、山部は人事科へ赴いた。
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