第1章

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近代、人々の生活は昔にくらべ驚くほど便利になった。その代わり自己中心な人が増えちょっとした事で皆クレーマーというモンスターになる。 だが不平不満は誰かに聞いてもらうだけで驚くほど消えてしまう事がある。 こんなにも人々の不満を解消出来る人が求められた時代は今まで無かったかもしれない。 特に企業はそんな人材が喉から手が出るほど欲しいだろう。 洗練された綺麗なビルに入るコールセンターのクレーム処理係に新人社員が入社した。 ここは日本中にネットワークシステムを広げる会社のコールセンターなので、クレームも日本中から寄せられる事になる。 コールセンターのクレーム処理という仕事に精神的にまいってしまうのではないかと不安を抱いていた新人だが、このコールセンターではみんな生き生きと仕事をしていた。 それを見て新人も頑張ろうと思った。だが不自然なほど皆が生き生きと仕事をしているのである日、クレーム係の係長に聞いてみた。 「どうして皆んなこんなに生き生きと仕事をしているんですか?」 と、すると先輩はこう言った。 「20年ほど昔、ここに佐藤さんという伝説的なクレーム処理の達人がいたんだよ。佐藤さんはどんなクレームでも笑顔で対応してね、同僚たちすらも佐藤さんがなんでも笑顔で聞いてくれるので不平不満を聞いてもらっていたらしい。佐藤さんに愚痴を聞いてもらうと皆本当にスッキリしたんだって。佐藤さんに対応してもらった全てのお客さんは全ての不満を佐藤さんに吸い取られるようにスッキリしてね、まるで心が浄化された様に不満が解消したんだよ」 「大変ですね。自分だったら絶対もたないや」 「一度佐藤さんは悪名高いクレーマーと12時間以上電話で対応した事があったらしい。それでも笑顔で対応し、クレーマーも最後は佐藤さんと打ち解けあい、それからというもの佐藤さんにお中元を送ってくるようになったという話だ。」 「すごいですね」 「まさにコールセンターの神だよ。また、すごいのは佐藤さんは自分は一言も愚痴をこぼさなかったらしい。誰かが佐藤さんに疲れませんか?って聞いた事があるらしい。そしたら佐藤さん、相手に思いやりを持って接すると何てことない、って笑ってたって。分かっていてもなかなか出来るもんじゃないよな。でも、そんな佐藤さんみたいになりたいと思いみんな仕事をしているんだ」
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