第1章

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「ちょ、おい月解!?」 「なに」 「なに、じゃねぇだろ!? 俺どうすればいいんだよ!?」  暁の言葉に、少女はぱちぱちと目を瞬かせ。 「……さぁ」 「は?」  呆気ないほどあっさりといった。 「わたしだって、こんなこと前例がないのよ。どうすればいいのかなんて、こっちが知りたいくらいだわ」  額を押さえながら呟く彩羽が、悩ましげに辺りを見回す。そして。 「…仕方ない、か……」  ぽつりと零して、ふわりと浮かび上がり。 「―――無限の桜。その眼を、異の国へと届けよ」  紅と蒼の瞳が、ふっと瞼の下に隠された。  やがて、しばしの沈黙が降り。 「…そう」  鈴の声が聞こえたとき、彩羽の姿は暁の目の前にあって。 「わっ!?」 「動かないで。……わたしの目を見て」 「へ……?」  わけが分からないのに、その威圧に圧されて大人しく少女の瞳に目を留める。 「……そうね。たぶん、無理」 「え?」  疲れたように目頭に指を当てながら呟いた言葉に、反射的にそんな返事が出てしまった。 「しばらくは、この地にいなければいけないと思う。……とはいっても、不自由はさせないつもりだから安心して?」 「いやそういう問題じゃないからな!?」  言い返した直後に、ぐぅっと音がした。彩羽の目が少年の腹部に向けられる。 「………あ、いや。これはその…」  そういえば、確かここに引き込まれたのは学校帰りだった。それ以降何も腹に納めていないのだから、いい加減空腹感を覚えても無理はない。  少女の頬が、僅かに緩んだ。 「そうだった。なにか食べるものがないと、人は生きていけないんだったわね」  そういって苦笑した彩羽の言葉に引っ掛かりを覚えて、暁は問い返す。 「人は……?」 「待ってて。今用意するから」  そういって触れた桜の木から、桜花弁がひらりと舞い散った。それを手に取り、少女がなにかを囁く。 「これで食べられると思うけど。味を感じなかったらすぐに吐き出して」
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