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「国家人口管理局『リコリス』直属掃除人、遠宮龍樹、並びに鈴見綾だな?」
同じようなひそやかな声が、龍樹の問いを無視して問いかけてきた。
その言葉に龍樹は目を眇める。
掃除人は国家の闇を背負う者。
つまり、公に出てきてはならない存在だ。
こんな真っ昼間に仕事服(リコリス)を纏ってのこのここんな人の多い所に出てくることからして言語道断だが、まさかそんな問いを口にするとは。
「何の真似だ」
龍樹は再び問いを重ねた。
相手の言葉を否定しないこと。
目の前を塞ぐ掃除人に怯まずここに立っていること。
この二つが掃除人達に対する答えだ。
それさえ分からない人間を相手にしているのであれば、このまま無視して帰宅してやろうと、龍樹は内心で考える。
「消えてもらう」
だがそんな適当な考えは、次の瞬間に蹴散らされることになった。
「っ!?」
その言葉と殺気に反応した綾が、龍樹に背を預ける形に立ち位置を変えた。
一瞬遅れて五人が二人の周りを取り囲む。
不思議そうな目で一行を見ていた通行人が、掃除人の手に現れた凶器を見て次々と悲鳴を上げ始めた。
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