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「お前、今何を持っている?」
混乱していくギャラリーを苦々しい表情で眺めながら、龍樹は背後に立つ綾に問いかけた。
二人を取り囲んだ掃除人は、絹を裂くような野次馬の悲鳴にピクリとも反応しない。
掃除人達の意識は、完全に龍樹と綾に固定されていた。
「手毬(てまり)だけだよ」
綾は表面上冷静に返してきた。
だがその裏に隠れる焦燥を隠しきることができていない。
綾とて分かっているのだ。
たった一丁の拳銃で五人の掃除人を倒すことなど、できはしないと。
「偃月(えんげつ)持ってないお前なんて、ただのお荷物だ」
「学校に薙刀なんて持ってこれるわけないでしょっ!!
そういうたっちゃんだって丸腰じゃんっ!!」
「日本刀なんて持ち歩いていたら、学校に着く前に銃刀法違反で警察署に連れていかれるだろうが」
ここでどんぱちを起こすわけにはいかない。
いくら掃除人が法から外れた所にいると言っても、それを表に向けて堂々と行使する訳にはいかない。
正当防衛だと言い張っても、リコリスの幹部はいい顔をしないだろう。
言いがかりをつけられて下手な処分でもくらったら事だ。
それに人目がある所では龍樹達自身が動きにくい。
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