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「やれっ!!」
目にも留まらぬ速さで抜かれた拳銃が激しく空気を震わせる。
三発連打で放たれた銃弾は、過たず男の両膝と右腕を打ち抜いた。
被弾した男がくず折れた瞬間、二人は躊躇うことなくその男を踏みつけて囲みを突破する。
他の男達が反応を示した時には、すでに二人の姿は細い裏路地の中へ消えていた。
決して二人を取り囲んだ男達が愚鈍であったわけではない。
逃げた二人の方が場数を踏んでいたのだ。
長年掃除人として生きてきたプロでも、あそこまで鮮やかな逃走劇を見せられるかは分からない。
「やはり遠宮龍樹か……っ!!」
リーダーから遠宮龍樹がいかに危険で有能な人間であるかは、嫌になるくらい聞かされている。
だがまさか、鈴見綾というお荷物を抱えてここまで戦えるほどの強さだとは、思ってもみなかった。
「追えっ!!」
「はっ!!」
傷付いた仲間を気にかけるような人間はいなかった。
革命に犠牲は付物。
そのことはここにいる全員が承知している。
「我らの役目は、どんな手段を使ってでも遠宮龍樹を殺すことだっ!!」
鈴見綾は、はっきり言ってどうでもいい。
後でどうにでもなる。
だが遠宮龍樹は駄目だ。
彼が死ななくては革命が成功しない。
「この宿命から、逃げ出すために……っ!!」
男はギリッと奥歯を食いしばると、先行した部下を追うために足に力を込めた。
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