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シュルシュルシュルと、操られているかのように、リンゴの皮が剥けていく。
「ほら、春日。できたよ」
「うわぁ」
ベッドの上に上半身を起した春日は、サイドテーブルに並ぶリンゴを見て目を輝かせる。
「文也さんって、本当に器用なのね」
そこにいるのは、リンゴでできたウサギに、リスに、ゾウに、キリンに……
さながら皿の上に動物園が現れたかのようだ。
しかもその一つ一つが、もはや芸術と呼んでいいほどに精巧にできている。
果物ナイフ一本だけで、どうしてここまでの細工ができるのか、もはや理解不能の域だ。
「春日にちゃんと食事をしてもらうためなら、なんだってするよ」
手を叩いて喜ぶ春日を眺め、文也は嬉しそうに目を細める。
文也がこの技を磨くためにリンゴ一箱を使い切ったとか、そこで切り刻まれたリンゴは全て綾に押し付けられることになったとか、その綾が『これは才能の無駄遣いじゃないの……?』と散々ぼやいたとか、そんな余談を春日は一切知らない。
知っていたら今とは違う反応を見せたかもしれないのだが。
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