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何気ない口調で紡がれる言葉はその実、死刑宣告のようなものだった。
『赤』に次ぐ実力者の称号である『紅』の血濡れ名。
そんな物を持っている人間はこの場にいない。
「……な、ぜだ………っ!!」
絶望に彩られた言葉に、文也は振り返った。
誰が言葉を発しているのかは分からない。
だがそんなことは関係ないのだろう。
おそらくこの言葉は、全員の胸の内の代弁なのだろうから。
「武器など…ど、こにも…………なかった、はず……っ!!」
「あなた達、私を襲う前に、少しは下調べをしたのですか?」
再び間を優雅に通り抜けた文也は、流れるような所作でペットボトルを開けると口を付けた。
「確かに私は、赤の二番席にいた時に緋姫を愛用していました。
ですが、私が『血濡れの彼岸花』の称号を得た時、使っていた得物は緋姫ではなかったのですよ?」
わずかに口元にこぼれた紅茶を、白い指先がグイッと拭う。
その瞬間、宙に細く紅い光が走った。
「っ!? ……糸っ!?」
指を伝った紅茶が指輪を伝い、指輪に伝った紅茶がそこから伸びた糸を伝っていく。
意識して見れば、紅茶が伝っていない場所の糸もうっすらと見ることができた。
文也の両手にはめられた指輪から伸びた糸は縦横無尽に宙を走り、男達の体を雁字搦めに捕らえている。
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