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「私が一体何のために、趣味でもないのにこんなに多くの装飾品を身につけていると思っているのですか?」
両手を眼前に掲げた文也は冷たく、そして優しく微笑む。
その様はまさしく、死者を前にしてほくそ笑む死神そのものだった。
両手にそれぞれ三つずつ通された指輪。
さらにそれぞれの手首には腕輪が通され、首筋には革のチョーカーが巻かれている。
その全てにワイヤーが仕込まれているのだとしたら……
丸腰などではない。
鈴見文也は完璧に武装しているということになる。
「『血濡れの彼岸花』を、舐めるな」
文也の指先がピッと張り巡らされたワイヤーを弾く。
たったそれだけの動きで、五人の掃除人は低い呻き声を上げて絶命した。
ただの物質と成り下がった元掃除人に一瞥もくれず、文也は軽く腕を振ってワイヤーを回収する。
「随分と優しく殺してやったんっすね」
いきなり届いた穏やかな声に、文也は無表情に顔を上げた。
いつの間にか黒服を纏った人間が一人増えている。
「本当はもっと派手に殺してやりたかったのですよ?」
だが文也が再び構えを取ることはなかった。
片手に紅茶のペットボトルをぶら下げた文也は、くつろいだ体勢で近付いてくる男を迎え入れる。
「ですが春日は血の匂いに敏感なので」
「……外見が変わっても、中身は相変わらず春日様至上主義なんっすね」
「そんなに変わりましたかね? 外見」
リコリスを裏切った後も付き従ってくれる忠実な己の部下に向かって、文也はわずかに首を傾げた。
漆黒のフロッグコートをラフに着こなした文也の従者は、真面目に考え込む文也を見て苦笑をこぼす。
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