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『掃除人狩りが多発している』
主は冷たい土の下に(Massa's in de Cold, Cold Ground)
そのタイトルの割に明るい曲調の着信音に叩き起こされ、しぶしぶ電話に出れば第一声がこれだ。
不機嫌になるな、という方が無理ではないだろうか。
『お前は狩られる質ではないと思うが、一応気を付けろ』
「……言いたいことはストレートに言え」
龍樹はいつものように屋上に陣取って、束の間のまどろみに身を任せていた。
それを聞きたくもない着信音に叩き起こされ、聞きたくもない声をほぼ無理矢理聞かされている。
龍樹の声に、愛想などという文字は欠片もない。
常に愛想などない龍樹だが、今は殺気までもが見え隠れしている。
『原因を見つけたら即排除しろ』
相手はそれに感付いているのかいないのか、相変わらず感情の見えない淡々とした声音で命じた。
『世に不利益な存在を排除するのが掃除人の役目。
決して排除されるために存在しているわけではない』
「片付ける側も片付けられる側も、そう大差ないだろうにな」
龍樹はその声に負けず劣らず感情のない声音を返した。
その皮肉に電話の向こう側にいた人間がわずかに反応したことは、雰囲気で分かった。
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