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「たっちゃんって、学校に何しに来てるの?
寝るだけなら家でもできるじゃん」
相方であり幼馴染である綾の登場に、龍樹は小さく溜め息をついた。
どうにもこいつが登場すると騒々しい。
そう言いつつも、こいつと絶交しないのはなぜだろうかと、龍樹はぼんやり考えた。
そしてすぐに答えを出す。
相方、だから。
掃除人として世間の闇を知る者同士である以上、離れることはできない。
それに龍樹は掃除人として、どうしても綾から離れるわけにはいかない理由がある。
「朱威(しゅい)から電話があった」
龍樹への不満を並べ立てる綾へ龍樹は静かに言った。
その言葉だけで綾の唇が動きを止める。
「仕事の指令じゃない」
一瞬にして凍りついた綾を安心させるように、龍樹はその内容を口に出した。
「ただ、警告された」
「……警告?」
「掃除人狩りが流行っているそうだ」
あまり重大に聞こえないように、軽い口調で声に出したつもりだった。
だが綾はその言葉が持つ不穏な響きを察して、再び体を凍りつかせる。
「……命知らずな流行だね。
逆に狩られかねないのに」
だが冗談を含ませてそう返した声は、いつも通りの明るさを持っていた。
綾とて龍樹とタッグを組む掃除人。
場数はそこそこに踏んでいる。
これしきの言葉で恐怖を抱き、震えることしかできなくなる者に、人を殺す冷酷な刃は握れない。
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